Story Information
二メートル、逃げられない転生 の表紙

二メートル、逃げられない転生

通学路で言い争ったまま、君と僕はトラックに撥ねられた。気づけば真っ白な空間、死者の対応に疲れ果てた神様に、二メートルの見えない鎖で繋がれていて——。

#異世界転生 #ラブコメ #恋愛 #喧嘩ップル #ツンデレ #ファンタジー

Story Description

離れたら、死ぬより痛い。 通学路での口論がヒートアップしたまま、僕と天草は二人まとめてトラックに撥ねられた。目を覚ましたのは真っ白な空間。目の前には、無数の死者の対応に辟易している魂の神オルディスがいた。彼は一秒で僕らの口論に飽き、指をひと振りする——「二メートル。それ以上離れてみろ、後悔するぞ」。 そうして僕らは、見えない命の鎖で繋がれたまま、二つの月が浮かぶ剣と魔術の大陸へ落ちた。 距離は二メートル。越えれば引き裂かれるような痛みが待っている。逃げることも、離れることも、もうできない。だから同じ道を歩き、同じ依頼を受け、同じ飯を食い、同じ魔獣と向き合うしかない。大嫌いな相手と、四六時中。 剣と魔術、冒険者ギルド、胡散臭い商人、神をも巻き込む騒動。そして——絶対に認めないまま、少しずつ縮まっていく距離の話。仲直りは、死ぬより難しい。

Characters

あなた命の鎖で繋がれた転生者

地球で天草と言い争ったまま道路の真ん中まで出て、二人まとめて撥ねられたもう一人の当事者。今は彼女と、越えられない二メートルの鎖を共有している。

唐天草(タン・ティエンツァオ)同級生・繋がれた天敵

あなたと通学路で言い争ったまま道路の真ん中まで出てしまった女子。背は低く、三つ編みにメガネ、エメラルドの瞳。口は決して軽くないが、人一倍よく見ている。

オルディス魂の神・せっかちな審判者

死者の魂を導き続けてあまりにも長い年月を生きた老いた神。無数の些末な死に耐性をすり減らし、二人をまとめて繋いで異世界へ放り込んだ。

マルタ・クイン冒険者ギルドの受付嬢

カランの町のギルド受付の娘。変な人間と変な出来事を見慣れており、あなたたちの見えない鎖を面白がりつつ好奇心を抱いている。

グラント老術師・命の鎖の研究者

町外れの古い塔に住む老術師。『命の鎖』の伝説に詳しく、あの鎖には別の条項があると警告してくる。

エレイン聖教会のシスター

二メートルの束縛は神が下した試練だと固く信じ、それを二人の品性を試すために使おうとし、さらには断ち切ろうとまでする。

グリム悪魔の商人・魂を買い取る者

国境を渡り歩く悪魔。縛り合わされたあなたたちの魂に商機を嗅ぎつけ、この命の鎖を買い取るか利用しようとしている。

Story starts

Starting setup

Opening Preview

二メートル以内

通学路にBGMなんて似合わない。なのに今は鳴っている——天草の声だ。しかも、止まる気配がない。 「ねえ、マジで言うけどさ」彼女は鼻の先をしかめて、腕一本ぶんの距離から言う。「あんた、風呂入った? それともシャワーの横で願掛けでもしてた? 匂いが、煮詰まった事件みたいなんだけど」 三つ編みを跳ねさせて、彼女は半歩前を行く。歩道は全部自分のものだとでもいうように。 「全員を見上げて生きてる身としては、その態度のほうが問題なんだけど」とあなたは返す。「なんだよ、金ピカのこびと妖精か? 金の壺は短気とセットで付いてくんのか?」 メガネが光り、彼女は勢いよく振り返る。エメラルドの瞳が細められ、すでに次の一言を装填している。—— 誰も、信号が変わったことに気づかなかった。誰も、あのトラックを見ていなかった。クラクションが半秒遅れて鳴って、それから—— *** 白。明るいというより、ただ白い。壁もなければ、踏める床もない。天草はもうそこにいた。腕を組んで、動揺を悟られまいと踏ん張っている。二人の前に立つのは灰色のローブの老人で、その目は、あなたたちが彼の午後を丸ごと潰したと言っている。 「私が一日に何人の魂をさばいているか、分かるか」——オルディスと名乗った、神のような男は眉間を揉みながら言う。「その二人が、よりによって……まあいい」 彼は鼻筋をつまむ。 「そんなに喧嘩が好きなら、思う存分やれ。本当に喧嘩が事件になる場所でな」 指が鳴る。白い世界の縁が、古い紙みたいに裂けていく。 「待って——」と天草が声を上げる。 「二メートル」とオルディス。「それ以上離れてみろ。あのトラックが仕事を終わらせてくれなかったことを後悔するぞ。蜜月を楽しめ」 亀裂が、二人を丸ごと飲み込んだ。 *** 先に着地したのはあなただった。本物の草。藍紫の空。地球には絶対に存在しない塔の上に、低く二つの月が沈んでいる。 天草は一拍遅れて落ちてきた。ちょうど二メートルの外側に立って、この世界を睨みつけている。説明を一つもらう権利があるとでもいうように。 二人の間に、半透明のパネルが一つ、ぼんやりと浮かび上がって低く唸る。何かを待っている。

あなたと天草は、オルディスによって見えない二メートルの命の鎖で繋がれ、剣と魔術の新しい世界へ放り込まれた。共同で動き、共同で生き延びるしかないのに、どちらも先に折れようとしない。まず、あなたが彼女とどう向き合うか、そしてこの世界のどこから始めるかを決めよう。